【2026年10月】「106万円の壁」賃金要件の撤廃で何が変わる?
ニュースで「106万円の壁が撤廃される」と聞いて、自分がいつから社会保険に入ることになるのか、手取りがどうなるのか気になった方も多いはずです。結論を先に言うと、2026年10月から、短時間労働者の社会保険加入における「月額賃金8.8万円以上(年収約106万円)」という賃金要件が撤廃されます。壁の全体像は年収の壁まとめもあわせてご覧ください。このページでは撤廃の中身と、加入した場合の天引き額の目安を整理します。
最終更新:2026年7月23日
1. 何が変わる?結論
2026年10月から、短時間労働者が勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入するための要件のうち、「月額賃金8.8万円以上(年収換算で約106万円)」という賃金要件が撤廃されます。これは2025年6月13日に成立した年金制度改正法にもとづくもので、いわゆる「106万円の壁」は事実上なくなります。
これまでは、週の労働時間などの要件を満たしていても「賃金が月8.8万円未満」であれば社会保険への加入対象外とされてきました。この賃金による線引きがなくなることで、今後は賃金額ではなく、週の労働時間などの要件で加入するかどうかが決まることになります。つまり「106万円を意識して働く時間を調整する」という発想そのものが、2026年10月以降は基本的に意味を持たなくなっていきます。
「106万円」はもともと法律上の固定金額ではなく、月8.8万円という賃金要件を年換算した俗称です。撤廃されるのはこの賃金要件であり、社会保険への加入基準自体がすべてなくなるわけではない点に注意してください。
2. 社会保険に入る条件はどうなる
短時間労働者が勤務先の社会保険に加入する要件は、これまで複数ありました。2026年10月の改正でどこが変わり、どこが残るのかを比較すると次のとおりです。
| 要件 | 2026年9月まで | 2026年10月以降 |
|---|---|---|
| 週の労働時間 | 週20時間以上 | 週20時間以上(維持) |
| 賃金 | 月額8.8万円以上(年収約106万円) | 撤廃 |
| 雇用期間の見込み | 2か月超の見込み | 維持(現行どおり) |
| 学生でないこと | 学生は原則対象外 | 維持(現行どおり) |
| 企業規模 | 従業員51人以上の企業(特定適用事業所) | 今後段階的に見直し予定 |
週20時間以上の労働時間、雇用期間の見込み、学生でないことといった要件は、2026年10月以降も基本的に維持される見込みです。一方、企業規模要件(現在は「従業員51人以上」)については、今後段階的に見直しが進められていく方針が示されています。ただし、見直しの具体的な時期・内容は政省令等で確定していく部分が大きいため、詳細は政省令で確定次第、このページを更新します。
つまり2026年10月以降は、「週20時間以上働き、2か月を超えて雇用される見込みがあり、学生でない」という条件を満たせば、月々の賃金額にかかわらず社会保険の加入対象になりうる、という整理になります。
3. 加入すると天引きはいくら増える?
社会保険に新しく加入すると、給与から健康保険料・厚生年金保険料が天引きされるようになります。ここでは、これまで「106万円の壁」の目安とされてきた月収8.8万円前後で厚生年金・健康保険に加入した場合の、本人負担の概算を見てみましょう。標準報酬月額は厚生年金の最低等級である第1級(8.8万円)で計算しています。
| 項目 | 本人負担の目安 |
|---|---|
| 厚生年金保険料(本人負担9.15%) | 約8,052円 |
| 健康保険料(協会けんぽ全国平均・本人負担4.95%) | 約4,356円 |
| 子ども・子育て支援金(本人負担0.115%) | 約101円 |
| 合計(40歳未満の目安) | 約12,509円 |
| 40歳以上65歳未満はさらに:介護保険料(本人負担0.81%) | 約713円 |
※月収8.8万円・健康保険料率9.90%(協会けんぽ全国平均・都道府県で異なる)で試算した概算です。実際の標準報酬月額・保険料率は加入する保険者(協会けんぽ・健保組合)や勤務先の判断によります。
月収8.8万円前後の場合、社会保険に加入すると月あたり1万2千円前後の天引きが新たに発生する計算になり、その分手取りは減ります。ただし、これは負担だけを見た話です。社会保険に加入することで得られる保障もあわせて考える必要があります。次の項で見ていきましょう。
4. 悪いことばかりではない:給付が手厚くなる
社会保険に加入すると天引きは増えますが、あわせて受けられる給付・保障も変わります。事実として中立に整理すると、次のような点が挙げられます。
- 将来の年金額が増える。厚生年金に加入すると、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金が上乗せされ、将来受け取る年金額が増えます。
- 傷病手当金・出産手当金の対象になる。健康保険(被扶養者ではなく本人として加入)では、病気やケガで働けない期間や産休中に、一定の要件のもとで手当金が支給される制度があります。被扶養者にはこの給付がありません。
- 障害年金・遺族年金の保障が厚くなる。厚生年金加入者は、障害を負った場合の障害厚生年金、亡くなった場合の遺族厚生年金の対象にもなり、国民年金のみの場合より保障の範囲が広がります。
「天引きが増える=一方的に損」というわけではなく、負担と給付は表裏の関係にあります。どちらを重視するかは働き方やライフプランによって異なるため、このページでは「入った方が得」「損」といった断定はしません。
5. 130万円の壁は残る
今回撤廃されるのは、あくまで106万円(賃金)の壁です。配偶者や親の社会保険の被扶養者でいられる収入の上限である130万円の壁(被扶養者認定の基準)は、別の仕組みとして維持されます。106万円の壁がなくなっても、130万円を超えて被扶養者から外れれば、その時点で自分自身が社会保険料を負担する側になる点は変わりません。
また、所得税がかかり始める103万円(改正後は160万円)や、扶養控除にかかわる103万円(改正後は123万円)といった「税の壁」は、社会保険の壁とはまったく別の制度です。「106万円の壁」「130万円の壁」「税の壁」を混同しないよう注意してください。壁全体の関係は年収の壁は結局いくら?2025年改正後の最新まとめで早見表にしています。
6. いま扶養内で働いている人が考えること
現在、扶養内を意識して働いている方が確認しておきたいポイントを、一般論として整理します。個別の損得判定はできませんので、ご自身の状況にあわせてご確認ください。
- 自分の週の労働時間を確認する。撤廃後も週20時間以上という要件は残る見込みのため、まずは自分の所定労働時間がどのくらいかを把握しておくとよいでしょう。
- 勤務先の企業規模を確認する。企業規模要件は今後段階的に見直される予定ですが、時期・内容は今後確定していく部分です。ご自身の勤務先が対象になるかどうかは、最終的に勤務先からの案内で確認することになります。
- 勤務先からの案内を待つ。社会保険への加入手続きは勤務先(事業主)を通じて行われます。対象になるかどうか、いつから加入になるかは、最終的に勤務先・加入先の保険者の判断によります。
- 手取りと給付のバランスで考える。天引きが増える分、将来の年金や傷病手当金などの保障も変わります。どちらを優先するかは、働き方や家計の状況によって一般に異なります。
7. よくある質問
- Q. 106万円の壁はいつから撤廃されますか?
- A. 2026年10月から、短時間労働者の社会保険加入における「月額賃金8.8万円以上(年収約106万円)」という賃金要件が撤廃される予定です。2025年6月13日に成立した年金制度改正法にもとづきます。
- Q. パートは全員が社会保険に入ることになりますか?
- A. いいえ。賃金要件がなくなっても、週20時間以上の労働時間などの要件は残る見込みです。週の労働時間がこれに満たない方は、引き続き加入対象外となる場合があります。
- Q. 会社から何か案内はありますか?
- A. 一般に、社会保険への加入手続きは勤務先(事業主)を通じて行われます。対象になるかどうか、加入時期がいつからになるかは勤務先からの案内で確認することになります。詳細が不明な場合は、勤務先の人事・労務担当や加入先の保険者にお問い合わせください。
- 厚生労働省「短時間労働者への社会保険の適用拡大」(加入要件の基本)
- 厚生労働省「年金制度改正法(令和7年6月13日成立)」(106万円の賃金要件撤廃・2026年10月施行の根拠)
- 厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ(被扶養者の一時的な収入増加への対応)」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料額表」(厚生年金保険料の試算根拠)
- 協会けんぽ「都道府県毎の保険料額表(令和8年度)」(健康保険料の試算根拠)
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」(支援金の試算根拠)