年末調整とは?12月の給与が増減する理由としくみ
毎月の給与から引かれている所得税は、じつは「概算」です。1年間の所得と控除が固まる年末に、正しい年税額を計算し直し、これまで天引きした合計との差額を精算する——これが「年末調整」です。多くの人は払い過ぎが戻ってきて12月の手取りが増え、人によっては不足分が追加で引かれます。本記事では、なぜ12月に金額が動くのか、対象になる人・確定申告が必要な人、必要な書類、そして令和7年(2025年)改正の影響までを順に解説します。
最終更新:2026年6月13日
1. 年末調整とは(源泉徴収は概算→年末に精算)
会社員やパートなど給与をもらう人は、毎月の給与から所得税(源泉所得税)が天引きされています。ただしこの毎月の天引き額は、「源泉徴収税額表」にもとづくあくまで概算です。1年が終わるまでは、その年の給与総額も、生命保険料控除や扶養の状況といった各種控除も確定しないため、正確な税額はその時点では決められないからです。
そこで、1年間の給与と控除が固まる年末に、勤め先がその人の本来の年税額を計算し直し、毎月天引きしてきた源泉所得税の合計との差額を精算するのが年末調整です。給与の支払者(会社)が行う手続きで、対象者の多くは自分で確定申告をしなくても所得税の精算が完了します。
所得税は1月〜12月の1年(暦年)で計算します。年末調整は通常、その年最後の給与(12月分など)の支払い時に行われます。毎月の天引き額がどこに載るかは給与明細の見方もご覧ください。
2. なぜ12月に手取りが増減するのか(還付・追徴)
毎月の天引きは概算なので、1年分を正しく計算し直すと、たいてい「天引きしすぎ」か「足りない」のどちらかのズレが出ます。このズレを年末に精算するため、12月(会社によっては翌1月)の給与で手取りが動きます。
| 結果 | 何が起きるか | 起こりやすいケースの例 |
|---|---|---|
| 還付(多くの人) | 払い過ぎた所得税が戻り、その月の手取りが増える | 生命保険料控除・地震保険料控除・iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)などを年末に申告した/扶養家族が増えた |
| 追徴(不足) | 足りなかった所得税が追加で引かれ、その月の手取りが減る | 年の途中で扶養家族が減った/配偶者の所得が増え配偶者控除等が縮小した/賞与が多かった |
| 差額なし | 精算額が出ず、手取りは変わらない | 毎月の概算と実際の年税額がたまたま一致した場合 |
「12月の給料が増えた」と感じるのは、ボーナスとは別に、この還付金が上乗せされているためであることが多いです。逆に控除が減った人は追徴になり手取りが減ります。どちらも「得・損」ではなく、1年分の所得税を正しい額にそろえる精算にすぎません。具体的な精算額は会社が交付する源泉徴収票や給与明細で確認できます。
賞与(ボーナス)からも所得税は源泉徴収されますが、これも概算で、最終的に年末調整で精算されます。賞与の天引きはボーナスから引かれるもので解説しています。
3. 対象になる人・ならない人(確定申告が必要なケース)
年末調整の対象は、ざっくり言うと給与の支払先が1か所で、年末まで在籍している(その会社に「扶養控除等申告書」を出している)人が中心です。一方、年末調整だけでは精算が完結せず、自分で確定申告が必要になるケースもあります。
| 区分 | 主な例 |
|---|---|
| 年末調整で完結しやすい人 | 給与1か所・年末まで在籍の会社員やパートで、確定申告が必要な所得や控除が特にない人 |
| 確定申告が必要・有利なことが多い人 |
・給与収入が2,000万円を超える人(年末調整の対象外) ・医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税でワンストップ特例を使わない/使えない場合)を受けたい人 ・住宅ローン控除の1年目(初年度)※2年目以降は年末調整で可能 ・給与を2か所以上から受けている人、給与以外に一定額を超える所得がある人 ・年の途中で退職し、年末時点で再就職していない人 など |
つまり、年末調整は「会社がやってくれる所得税の精算」、確定申告は「年末調整で対応できない控除や所得を自分で申告する手続き」と整理できます。医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例未利用)、住宅ローン控除の初年度などは、年末調整ではなく確定申告が必要です。
ふるさと納税のワンストップ特例と確定申告の使い分けはふるさと納税と住民税でくわしく説明しています。ここに挙げた要件は代表例で、該当するかの最終判断は国税庁の案内や所轄の税務署でご確認ください。
4. 必要な申告書と主な控除
年末調整では、勤め先から配られる申告書に記入して提出します。代表的なのは次の書類です。提出する控除によって必要書類が変わります。
| 申告書 | 主に申告する内容 |
|---|---|
| 扶養控除等(異動)申告書 | 扶養親族・控除対象配偶者、障害者控除、ひとり親控除など。給与1か所で年末調整を受ける前提となる書類 |
| 基礎控除・配偶者(特別)控除・所得金額調整控除の申告書 | 本人の基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除、所得金額調整控除(一定の場合)。令和7年分から特定親族特別控除の欄も関係します |
| 保険料控除申告書 | 生命保険料控除・地震保険料控除・社会保険料控除(給与天引き以外で自分が払った分)・小規模企業共済等掛金控除(iDeCo等) |
生命保険料控除証明書やiDeCoの掛金払込証明書などは、秋ごろに郵送される証明書を添付(または提示)して申告します。これらを出し忘れると控除が反映されず、本来より所得税が高いままになるため、毎月の概算からの還付も受けられません。書類は早めに準備しておくと安心です。
5. 令和7年(2025年)改正の影響
令和7年度(2025年度)の税制改正で、所得税の基礎控除と給与所得控除が見直され、特定親族特別控除が新たに創設されました。国税庁によると、これらは令和7年分以後の所得税に適用され、令和7年12月に行う年末調整から反映されます。主な変更点は次のとおりです。
| 項目 | 改正の内容 |
|---|---|
| 給与所得控除の最低保障額 | 55万円 → 65万円に引き上げ |
| 基礎控除 | 合計所得金額に応じた段階的な額に見直し(下表)。改正前は原則48万円 |
| 扶養親族・同一生計配偶者の所得要件 | 合計所得金額 48万円以下 → 58万円以下に緩和 |
| 特定親族特別控除(新設) | 年齢19歳以上23歳未満の親族で、合計所得金額が58万円超123万円以下の人について、その所得に応じて最高63万円を控除 |
見直し後の基礎控除額は、合計所得金額の区分ごとに次のようになります(令和7年分・令和8年分)。
| 合計所得金額 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 132万円以下 | 95万円 |
| 132万円超 336万円以下 | 88万円 |
| 336万円超 489万円以下 | 68万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 63万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 58万円 |
132万円超655万円以下の上乗せ(88万円・68万円・63万円)は令和7年分・令和8年分の措置で、令和9年分以後は58万円に統一される予定です(確定した改正内容)。さらに合計所得2,350万円を超えると基礎控除は段階的に縮小し、一定額を超えると適用されません。金額はすべて概算で、ご自身に当てはまる額は国税庁の案内でご確認ください。
給与だけで暮らす人にとっては、給与所得控除(最低65万円)と基礎控除(最大95万円)が広がったことで、所得税がかからない収入の目安が引き上げられたのがポイントです。いわゆる「年収の壁」にも関わる改正で、くわしくは年収の壁で扱っています。
6. 住民税との関係
年末調整はあくまで所得税の精算であり、住民税の額をその場で直接精算するものではありません。住民税は前年の所得をもとに翌年に課税されるため、12月の年末調整で住民税が戻ったり追加されたりすることはありません。
ただし、年末調整で確定した所得や控除の情報は、勤め先から市区町村へ給与支払報告書として提出され、翌年度の住民税を計算する基礎になります。つまり年末調整の結果は、年明けすぐではなく翌年6月から始まる住民税の天引き額に反映されていきます。住民税が動くしくみは住民税決定通知書の見方で解説しています。
所得税(年末調整・確定申告で当年に精算)と住民税(前年所得に対し翌年6月〜翌々年5月に課税)はタイミングが1年ずれます。給与から引かれるもの全体の流れは給与から引かれるもの一覧をご覧ください。
7. よくある質問
Q. 年末調整で必ずお金が戻ってくるの?
A. いいえ。多くの人は払い過ぎの還付になりますが、年の途中で扶養が減るなどした場合は不足分が追加で引かれる(追徴)こともあります。戻るか追加かは1年分を計算し直した結果によります。
Q. 年末調整をすれば確定申告はいらない?
A. 給与1か所で年末まで在籍し、医療費控除やふるさと納税(ワンストップ未利用)、住宅ローン控除の初年度などに当てはまらなければ、原則として確定申告は不要です。これらに当てはまる場合は確定申告が必要です(上の対象になる人・ならない人参照)。
Q. 保険料控除の証明書を出し忘れたらどうなる?
A. その控除が反映されず、本来より所得税が高いままになります。年末調整に間に合わなかった場合でも、自分で確定申告をすれば精算できます。
Q. 令和7年(2025年)の改正で手取りは増える?
A. 給与所得控除の最低65万円・基礎控除の見直しにより、課税対象が小さくなる人は所得税が減る方向に働きます。実際の増減は収入や控除の状況によって異なり、令和7年12月の年末調整から反映されます。