月額変更届(随時改定)とは?出すタイミングと保険料が変わる月
昇給・降給などで給与が大きく変わったとき、社会保険料のもとになる標準報酬月額を年の途中で見直す仕組みが「随時改定」です。会社が提出するのが「月額変更届」で、従業員本人が窓口に行く必要はありません。いつ・どんな条件で保険料が変わるのかを、標準報酬月額はいつ変わるの解説とあわせて一次資料ベースで整理しました。
最終更新:2026年7月23日
1. 月額変更届とは
社会保険料(健康保険・厚生年金保険)は、実際の給与そのものではなく「標準報酬月額」という区切りのよい等級にあてはめた金額をもとに計算されます。この標準報酬月額は、原則として毎年1回、4〜6月の報酬平均から決め直される「定時決定」で更新されますが、年の途中で昇給・降給などにより給与が大きく変わった場合には、次の定時決定を待たずに見直す仕組みが用意されています。これを「随時改定」といい、そのために会社が年金事務所(または健康保険組合)へ提出する書類が「月額変更届」です。
月額変更届は会社(事業主)が作成・提出するもので、従業員本人が自分で手続きをしたり、書類を用意したりする必要はありません。給与担当者が対象者を洗い出し、届出を行うことで、標準報酬月額と実際の給与水準のズレを是正します。
「随時改定」が制度上の名称で、「月額変更届」はその手続きに使う届出書の名前です。日常的にはどちらの言葉で呼ばれることもあります。
2. 随時改定になる3つの条件
随時改定は、給与が少し変わるたびに行われるわけではありません。次の3つの条件をすべて満たした場合にだけ実施されます。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①固定的賃金の変動 | 昇給・降給や、基本給・役職手当などの新設・廃止・変更があった。残業代のように月ごとに増減する「変動的な賃金」の増減だけでは対象外 |
| ②2等級以上の差 | 固定的賃金が変動した月から3か月間の報酬平均をもとに出した標準報酬月額が、従来の等級と比べて2等級以上ちがう |
| ③3か月とも支払基礎日数17日以上 | 変動月から数えた3か月とも、支払基礎日数が17日以上ある(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上) |
この3つをすべて満たしたときだけ随時改定が行われます。たとえば残業代だけが増えて総支給額が上がっても、①の「固定的賃金の変動」がなければ随時改定の対象にはなりません。逆に昇給があっても、その結果の等級差が1等級以内にとどまれば②を満たさず、改定されないこともあります。
3. いつから保険料が変わる?
随時改定の条件を満たした場合、標準報酬月額が改定されるのは固定的賃金が変動した月(変動後の給与を最初に受けた月)から数えて4か月目からです。
たとえば4月に昇給し、4・5・6月の報酬平均で2等級以上の差が出た場合、7月分の標準報酬月額から改定されます。実際に手取りの天引き額が変わって見えるのは、当月分の保険料を翌月給与から控除する会社が多いため、8月支給の給与からとなるのが一般的です(当月控除の会社では7月支給分から変わります)。
| 変動月(変動後の給与を最初に受けた月) | 改定月(4か月目) |
|---|---|
| 1月 | 4月 |
| 2月 | 5月 |
| 3月 | 6月 |
| 4月 | 7月 |
| 5月 | 8月 |
| 6月 | 9月 |
| 7月 | 10月 |
| 8月 | 11月 |
| 9月 | 12月 |
| 10月 | 翌年1月 |
| 11月 | 翌年2月 |
| 12月 | 翌年3月 |
給与から実際に天引きされる保険料額がいつの給与明細から変わるかは、会社が「当月分を当月控除」か「当月分を翌月控除」かによって1か月前後します。詳しくは勤務先の給与規程・給与担当にご確認ください。
4. 定時決定との関係
標準報酬月額のもう一つの見直しタイミングが、毎年7〜9月ごろに行われる「定時決定」です。原則として4〜6月の報酬平均から標準報酬月額を決め直し、算定基礎届という書類を会社が提出します(提出期間は7月1日〜10日)。
ここで注意したいのが、随時改定は定時決定より優先されるという点です。7月・8月・9月に随時改定が行われる(=改定月がこの3か月にあたる)人は、その年の定時決定の対象からは外れます。すでに随時改定で実態に合った標準報酬月額に更新されるため、重複して定時決定を行う必要がないためです。
定時決定の仕組み・算定基礎届の詳しい内容は、算定基礎届とはのページで解説しています。
5. こんなときはどうなる?
随時改定にまつわる、よくある疑問を一般論として整理します。個別の判定は最終的に勤務先や年金事務所・加入する健康保険の決定によります。
- 降給した場合 — 随時改定は昇給だけでなく、降給で固定的賃金が下がり2等級以上下がった場合にも同様に行われます。標準報酬月額が下がれば天引きされる社会保険料も下がりますが、その分だけ将来受け取る老齢厚生年金の計算のもとになる金額や、傷病手当金・出産手当金などの給付水準にも影響しうる点は留意が必要です。
- 産休・育休明けの場合 — 産前産後休業や育児休業などを終えて職場復帰し、時短勤務などで給与が下がった場合には、随時改定とは別に「産前産後休業終了時改定」「育児休業等終了時改定」という特例の仕組みが用意されています。これは随時改定の3要件(固定的賃金の変動・2等級以上の差など)とは判定基準が異なる制度のため、該当する可能性がある方は勤務先の給与・人事担当にご確認ください。
- 通勤手当が変わった場合 — 通勤手当は「固定的賃金」に含まれるため、引っ越しや通勤経路の変更などで通勤手当の支給額が変わった場合も、随時改定の①の要件(固定的賃金の変動)にあたります。ほかの2要件も満たせば改定の対象になります。
6. よくある質問
Q. 残業代が増えただけでは標準報酬月額は変わりませんか?
A. 一般に変わりません。随時改定は①固定的賃金(基本給・諸手当など)の変動が出発点になる仕組みで、残業代のように月によって変動する賃金が増減しただけでは対象になりません。ただし残業代を含む総支給額は、毎年の定時決定(4〜6月平均)には影響します。
Q. 随時改定を本人が拒否することはできますか?
A. 随時改定は要件を満たせば法律上のルールに沿って行われる仕組みであり、一般に従業員本人の意思で拒否できるものではありません。制度の適用や等級の決定は最終的に会社・年金事務所(または加入する健康保険)の判断によります。
Q. 2等級ちょうど上がったかどうか、自分で確かめる方法はありますか?
A. 昇給・降給後3か月の給与平均から標準報酬月額の等級を自分で確認し、以前の等級と比べる方法があります。保険料額・標準報酬月額の早見表を使うと、おおよその等級を把握しやすくなります。正確な等級・改定の有無は、最終的に会社の届出内容や加入先の決定によります。