退職したら健康保険・年金の天引きはどうなる?任意継続・国保・扶養の選び方
会社を辞めると、これまで給与から自動で天引きされていた健康保険料・厚生年金保険料の「会社まかせ」が終わり、自分で加入先を選んで保険料を払う立場になります。退職後(75歳未満)の医療保険は「任意継続」「国民健康保険」「家族の扶養に入る」の3択。さらに年金も厚生年金から国民年金へ切り替える手続きが必要です。それぞれの違いと選び方を、2026年度(令和8年度)の情報で中立にまとめました。
最終更新:2026年6月12日
1. 天引きはいつまで?退職月の保険料
在職中は、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・所得税・住民税が給与から天引きされていました。退職すると、このうち社会保険(健康保険・厚生年金)の被保険者資格は退職日の翌日に失われます。最後の給与で当月分・前月分がまとめて引かれることがあるため、退職月の手取りがいつもと違って見えることがあります。
とくに住民税は注意が必要です。住民税は前年の所得に対して6月〜翌年5月の12回で後払いする仕組みのため、退職後も納める義務が残ります。退職の時期によっては、残りの住民税が最後の給与や退職金からまとめて一括徴収されたり、退職後に自分で納付書(普通徴収)で払うことになったりします。住民税のしくみは住民税決定通知書の見方でくわしく解説しています。
※退職後にどの保険にも加入しない「空白」をつくることはできません。日本は国民皆保険・皆年金のため、退職日の翌日からいずれかの医療保険・年金への加入が必要です。手続きが遅れても加入日はさかのぼり、保険料も発生します。
2. 退職後の健康保険は3択
すぐに次の会社へ転職して新しい勤務先の健康保険に入る場合を除き、退職後(75歳未満)の公的医療保険は次の3つから選びます。どれを選ぶかで保険料も手続きも変わります。
- 健康保険の任意継続 … 退職前に入っていた健康保険に、最長2年間そのまま継続加入する。
- 国民健康保険(国保) … お住まいの市区町村が運営する医療保険に加入する。
- 家族(配偶者など)の被扶養者になる … 収入要件を満たせば、家族が入っている健康保険の扶養に入る。
1つだけが当てはまるとは限らず、条件を満たせば複数の選択肢が取れます。次の章で違いを並べて見ていきましょう。
3. 3つの選択肢を中立に比較
「どれがいちばん安いか」は、前年の所得・扶養家族の有無・お住まいの自治体の料率によって変わるため、一概には言えません。下の表で特徴をつかんだうえで、実額は退職前の保険者と自治体の両方で試算するのが確実です。
| 項目 | 任意継続 | 国民健康保険 | 家族の扶養 |
|---|---|---|---|
| 運営 | 退職前の健康保険 (協会けんぽ/健保組合) | 市区町村 | 家族の勤務先の健康保険 |
| 保険料の決まり方 | 退職時の標準報酬月額が基準。原則として会社負担分も本人が払う | 前年の所得をもとに自治体が算定(料率・計算方式は自治体ごと) | 本人の保険料負担はなし |
| 加入できる期間 | 最長2年間 | 要件を満たす限り継続 | 収入要件を満たす限り継続 |
| 申請の期限 | 退職日の翌日から20日以内 | 退職日の翌日から14日以内(遅れた場合の扱いは自治体に要確認) | 家族の勤務先を通じて手続き |
| 主な条件 | 退職までに継続して2か月以上の被保険者期間があること等 | 他の医療保険に入っていないこと | 原則 年収130万円未満(60歳以上・一定の障害者は180万円未満)かつ被保険者の収入の概ね1/2未満等 |
※任意継続の保険料には上限があります。基準となる標準報酬月額は「退職時の標準報酬月額」と「その保険者の全被保険者の平均に基づく標準報酬月額」のいずれか低い方。協会けんぽの令和8年度(2026年度)の上限は標準報酬月額32万円です(令和7年度から据え置き。令和6年度までは30万円でした)。健保組合は組合ごとに上限・料率が異なります。実額は加入先で確認してください。
ざっくりした傾向としては、家族の扶養に入れる条件を満たすなら、自分の保険料負担がゼロになるため最も軽いことが多いです。任意継続と国保は、退職前の所得が高かった人ほど国保(前年所得ベース)の初年度が高くなりやすく、上限のある任意継続が有利になることもあります。逆に退職後すぐ収入が大きく下がる見込みなら、国保は2年目以降に軽くなる傾向があります。扶養家族が多い場合、任意継続なら扶養家族分の保険料が別途かからない点も比較材料です。
国民健康保険・後期高齢者医療にかかる子ども・子育て支援金の年収別の目安は国民健康保険・後期高齢者医療制度のページにあります。国保の保険料“全体”(医療分・後期高齢者支援金分・介護分の合計)は前年所得や世帯構成、自治体ごとの料率で大きく変わるため、実額はお住まいの市区町村の窓口や試算で確認してください。
4. 厚生年金から国民年金への切替
退職で抜けるのは健康保険だけではありません。厚生年金保険(国民年金の第2号被保険者)からも外れるため、年金の切替手続きが必要です。すぐ次の会社に入らず、自営業・フリーランスになる場合や無職期間がある場合は、国民年金の第1号被保険者への切替を行い、国民年金保険料を自分で納めます。
| 退職後の状況 | 入る区分 | 手続き先・ポイント |
|---|---|---|
| 自営業・フリーランス・無職になる | 国民年金 第1号被保険者 | 市区町村の国民年金窓口。保険料の納付義務あり |
| 配偶者の扶養に入る(配偶者が会社員等) | 国民年金 第3号被保険者 | 配偶者の勤務先を通じて手続き。本人の保険料負担なし |
| すぐ次の会社に入る | 引き続き 第2号被保険者 | 新しい勤務先で手続き(給与天引きが続く) |
※上の表は60歳未満で退職する場合の切替です。国民年金の加入義務は60歳になるまでのため、60歳以降に退職する方は第1号への切替や保険料納付は原則不要です(受給に必要な期間が足りない場合などは65歳まで任意加入できます)。また第1号への切替・国民年金保険料の納付が必要なのに手続きをしないと、未納期間が将来の年金額に影響します。退職(失業)を理由とした保険料の特例免除を申請できる場合があるため、納付が難しいときは国民年金窓口に相談してください。年金額や免除の判断など個別の試算は、ねんきんネットや年金事務所での確認が確実です。
厚生年金そのもののしくみ(保険料率18.3%・本人負担9.15%、標準報酬月額の上限など)は厚生年金のページで解説しています。
5. 手続きの期限まとめ
退職後の手続きは期限が短いものが多く、複数を並行して進める必要があります。代表的な期限を整理します。
| 手続き | 期限の目安 | 窓口 |
|---|---|---|
| 健康保険の任意継続 | 退職日の翌日から20日以内 | 退職前の健康保険(協会けんぽ等) |
| 国民健康保険への加入 | 退職日の翌日から14日以内 | 市区町村の窓口 |
| 国民年金(第1号)への切替 | 退職日の翌日(資格喪失日)から14日以内 | 市区町村の国民年金窓口 |
とくに任意継続の「20日以内」は厳格です。この期限を過ぎると原則として任意継続を選べなくなり、国保か扶養になります。迷っている場合でも、先に任意継続の試算を取り寄せ、国保の保険料も自治体で確認したうえで、期限内に判断するのが安全です。
退職金やボーナスから何が引かれるか・引かれないか(住民税は賞与から引かれない等)が気になる方は、ボーナスから引かれるもののページもあわせてご覧ください。給与・賞与から天引きされる項目の全体像は天引きされるもの一覧で確認できます。