定時決定と随時改定の違い|標準報酬月額が決まる4パターンを比較表で整理
社会保険料のもとになる「標準報酬月額」は、いくつかの決まったタイミングでしか見直されません。中でも混同されやすいのが定時決定と随時改定です。似ているようで目的も届出書類も違うこの2つを比較表で整理し、あわせて標準報酬月額が決まる4つのパターンを一覧できるようにまとめました。標準報酬月額はいつ・どう変わるの要点整理版としてもご利用いただけます。
最終更新:2026年7月23日
1. 結論:標準報酬月額が決まる4パターン
健康保険料・厚生年金保険料の計算のもとになる標準報酬月額は、給与が変わるたびに自動で更新されるわけではありません。標準報酬月額が決まる・変わるのは、次の4つのタイミングだけです。
- ①資格取得時決定 — 入社(社会保険への新規加入)のときに、見込みの給与額から最初の標準報酬月額を決める
- ②定時決定 — 毎年1回、4〜6月の報酬平均から標準報酬月額を決め直す(届出書類:算定基礎届)
- ③随時改定 — 昇給・降給など給与が大きく変わったときに、年の途中で標準報酬月額を見直す(届出書類:月額変更届)
- ④育児休業等終了時改定 — 育児休業などから復職し、給与が下がった場合などに、本人の申出により標準報酬月額を見直す
このうち特に混同されやすいのが②定時決定と③随時改定です。次の章で違いを比較表にまとめます。
2. 定時決定と随時改定の比較表
定時決定と随時改定は、どちらも「標準報酬月額を決め直す」仕組みという点は共通していますが、目的・きっかけ・届出書類・改定される時期が異なります。
| 項目 | 定時決定 | 随時改定 |
|---|---|---|
| 目的 | 実際の給与と標準報酬月額のズレを年1回まとめて是正する | 昇給・降給などで給与が大きく変わったときに、年の途中でも実態に合わせる |
| きっかけ | 毎年決まって訪れる年次のタイミング(手続きの発生に給与変動は不要) | 固定的賃金(基本給・諸手当など)の変動 |
| 対象者 | 原則として7月1日時点で在籍している全ての被保険者(6月1日以降入社・随時改定対象者は除く) | 固定的賃金が変動し、下記3要件をすべて満たした被保険者 |
| 判定に使う報酬 | その年の4月・5月・6月に支払われた報酬の平均(支払基礎日数17日以上の月が対象) | 固定的賃金の変動月から3か月間の報酬平均(3か月とも支払基礎日数17日以上が要件) |
| 届出書類 | 算定基礎届 | 月額変更届 |
| 届出するのは誰 | 会社(事業主)。本人の手続きは不要 | 会社(事業主)。本人の手続きは不要 |
| 改定される時期 | その年の9月分から | 固定的賃金の変動月から数えて4か月目から |
| 適用される期間 | その年の9月分〜翌年8月分(原則1年間) | 次の随時改定または定時決定があるまで |
それぞれの詳しい仕組みは、算定基礎届とは(定時決定の実務)と月額変更届・随時改定とはのページで解説しています。
3. 4パターン一覧表
定時決定・随時改定を含めて、標準報酬月額が決まる4つのパターンを横断的に整理すると、次のとおりです。
| パターン | いつ | 要件の概要 | 改定時期 |
|---|---|---|---|
| ①資格取得時決定 | 入社・社会保険加入時 | 雇用契約などで見込まれる報酬額から決定 | 資格取得月から適用 |
| ②定時決定 | 毎年7月 | 4〜6月の報酬平均(支払基礎日数17日以上の月が対象) | その年の9月分から |
| ③随時改定 | 随時(給与変動時) | 固定的賃金の変動+変動月から3か月平均で2等級以上の差+3か月とも支払基礎日数17日以上、の3要件すべて | 変動月から4か月目から |
| ④育児休業等終了時改定 | 育休等からの復職後 | 復職後3か月の報酬平均で1等級以上の差(申出制) | 復職後4か月目から |
④育児休業等終了時改定は、③随時改定より要件が緩やかです。随時改定では「2等級以上の差」が必要ですが、育児休業等終了時改定では1等級差でも対象になり、かつ本人が会社を通じて申出をすることで改定されます(自動では改定されません)。時短勤務などで復職直後に給与が下がりやすいことに配慮した特例です。詳しくは産休・育休の保険料免除のページもあわせてご覧ください。
4. どれに当たる?かんたんチェック
自分の標準報酬月額がどのパターンで決まった(変わった)のか迷ったときは、次のチェックが目安になります。最終的な判定は勤務先の届出内容によります。
- 入社したばかり → ①資格取得時決定に当たります。見込み額で決まった標準報酬月額が、最初の定時決定(翌年以降の7月)まで使われます。
- 毎年9月ごろに保険料が変わる → ②定時決定の可能性が高いです。4〜6月の報酬平均によって、9月分から向こう1年の保険料が決まります。
- 昇給・降給があった → ③随時改定の可能性があります。ただし固定的賃金の変動・2等級以上の差・3か月とも支払基礎日数17日以上という3要件をすべて満たす必要があるため、詳しい条件は月額変更届・随時改定とはで確認してください。
- 育休から復帰した → ④育児休業等終了時改定の可能性があります。復職後に時短勤務などで給与が下がった場合、本人の申出により1等級差でも改定される場合があります。
5. よくある混同
用語や書類が似ているため、次のような混同がよく見られます。
- 「算定基礎届」=定時決定の書類、「月額変更届」=随時改定の書類です。どちらも会社が年金事務所(または健康保険組合)へ提出するもので、名称と手続きの対応関係を覚えておくと迷いません。
- 7〜9月に随時改定される人は、その年の定時決定の対象外になります。随時改定による改定月が7月・8月・9月のいずれかに当たる場合、すでに実態に合った標準報酬月額に更新されているため、重複を避ける目的で随時改定が優先され、算定基礎届による定時決定の対象からは外れます。
6. よくある質問
- Q. 定時決定と随時改定が同じ年に両方あることはありますか?
- A. 一般にありません。7〜9月に随時改定の対象になる人は、その年の定時決定の対象から外れる仕組みになっているためです。ただし、それ以外の時期(10月〜翌年6月)に随時改定があり、その後の7月にあらためて定時決定の対象になる、という形で年をまたいで両方の手続きに関わることはあります。
- Q. どちらも本人は何もしなくていいのですか?
- A. 定時決定(算定基礎届)と随時改定(月額変更届)は、いずれも会社(事業主)が作成・提出する書類で、従業員本人が申請書を書いたり窓口に行ったりする手続きは不要です。一方、④育児休業等終了時改定は本人からの申出が前提となる点が異なります。
- Q. 自分がどれで標準報酬月額が変わったのか確認するには?
- A. 会社の給与・労務担当に確認するのが最も確実です。そのほか、会社から届く決定通知書や、変更前後の給与明細を見比べて健康保険料・厚生年金保険料の天引き額がいつから変わったかを確認する方法もあります。定時決定の反映時期の詳しい流れは定時決定はいつ給与に反映される?のページで解説しています。