社会保険料はいつの給与から引かれる?入社月・退職月のルール

「初任給で社会保険料が引かれていない」「最後の給与から2か月分も引かれた」——どちらも多くの場合、間違いではなく社会保険料が「月」単位で発生し、当月分をいつの給与から引くか(当月控除・翌月控除)が会社によって異なるために起きるズレです。入社月・退職月それぞれのルールを整理します。標準報酬月額そのもののしくみは標準報酬月額の調べ方もあわせてご覧ください。

最終更新:2026年7月23日

1. 大前提:社会保険料は「月」単位

健康保険・厚生年金の保険料には、日割り計算がありません。1日だけ在籍した月でも1か月分の保険料が発生し、逆に月の途中で資格を失った月は原則として保険料がかかりません。ポイントは次の2つです。

この「月単位・日割りなし」というルールそのものは、入社時期・退職時期にかかわらず共通です。何日分働いたかではなく、月末時点(または月の途中の資格得喪のタイミング)でどちらの資格を持っていたかで、その月の保険料の要否が決まります。

2. 当月控除と翌月控除

「何月分の保険料が発生するか」と「その保険料をいつの給与から天引きするか」は、別の話です。当月分の保険料をいつの給与から引くかは、会社によって次の2通りに分かれます。

当月控除と翌月控除のちがい
控除方法内容
翌月控除当月分の保険料を、翌月支給の給与から天引きする方式。実務上、多数派とされています。
当月控除当月分の保険料を、同じ月に支給する給与から天引きする方式。

どちらの方式かは会社の給与計算のルールで決まっており、本人が選べるものではありません。一般的には翌月控除の会社が多いとされますが、当月控除の会社も存在します。自分の会社がどちらかを見分けるヒント(入社月の給与で引かれているか、給与明細の表記など)は定時決定はいつ給与に反映される?の3章で詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。もっとも確実なのは人事・労務担当への直接確認です。

3. 入社したとき

社会保険の資格は、原則として入社日(雇用が始まった日)に取得し、入社した月から保険料が発生します。試用期間中であっても、社会保険の加入要件を満たしていれば同様です。ただし、給与から実際にいつ天引きされるかは、会社の控除方式によって変わります。

入社月の天引き(控除方法別)
控除方法初任給(入社月に支給される給与)2回目の給与
翌月控除社会保険料は引かれない(入社月分は翌月にまとめて控除)入社月分の保険料がここで初めて引かれる
当月控除入社月分の保険料が初任給から引かれる通常どおり2回目分の保険料が引かれる

翌月控除の会社では、初任給から社会保険料が引かれず、その分だけ手取りが多く見えることがあります。これは「保険料が免除された」わけではなく、単に控除のタイミングが1か月ずれているだけです。2回目の給与でまとめて(入社月分1か月分が)引かれます。会社の控除方式によるもので、異常なことではありません。

4. 退職したとき

退職時の社会保険料は、資格喪失日が「退職日の翌日」であることが最大のポイントです。退職日が月の途中か月末かによって、退職月分の保険料が発生するかどうかが変わります。

退職日による社会保険料の違いを示す図。7月20日に退職すると翌日の7月21日に資格喪失し7月分の保険料は不要になるが、7月31日の月末に退職すると8月1日に資格喪失し7月分まで保険料が発生し、最後の給与で2か月分が引かれることがある。 退職日で変わる保険料 月中に退職 7月20日 翌日に資格喪失 7月21日 7月分の保険料は 不要 月末に退職 7月31日 翌日に資格喪失 8月1日 7月分まで 保険料が発生 最後の給与で 2か月分引かれることも
図:退職日で変わる保険料。月の途中の退職は当月分の保険料が不要になり、月末退職は当月分まで発生して最後の給与で2か月分引かれることがある
退職時の3ケース比較
ケース資格喪失日退職月分の保険料最後の給与(翌月控除の場合)
①月の途中で退職(例:7/20退職)7/21(7月中)不要(7月はすでに資格喪失後の月)6月分の保険料のみが控除される
②月末に退職(例:7/31退職)8/1(8月)必要(7月末時点ではまだ資格があるため7月分まで発生)6月分+7月分の2か月分が控除されることがある
③退職後の保険(任意継続・国保・扶養)退職後の健康保険・年金の選び方を参照

②の「月末退職で2か月分」の正体はこうです。翌月控除の会社では、最後の給与(多くは退職月に支給される給与)で「6月分(前月分・通常どおり)」と「7月分(退職月分・本来なら翌月に控除するはずだった分)」をまとめて控除する必要が生じます。会社によっては退職月分を最後の給与でまとめて精算するため、結果として2か月分が一度に引かれたように見えるのです。当月控除の会社では、7月分は7月の給与で通常どおり引かれるため、このような「2か月分」の見え方にはなりにくい傾向があります。

①のように月の途中で退職すると、その月の資格喪失日は退職日の翌日(月内)になるため、退職した月そのものの保険料は原則不要です。「同じ7月でも、20日退職と31日退職とで結果が正反対になる」という点が、このテーマで最も誤解されやすいポイントといえます。

退職後にどの医療保険・年金に加入するか(任意継続・国民健康保険・家族の扶養、国民年金への切替など)は、退職後の健康保険・年金はどうなる?で中立に比較しています。

5. こんなケースは?

入社した月に退職した(同月得喪)

同じ月のうちに入社(資格取得)と退職(資格喪失)の両方が発生するケースは「同月得喪」と呼ばれます。この場合、一般的な月単位のルール(資格喪失月は保険料不要)がそのまま当てはまらず、その月の保険料が必要になる場合があります。取り扱いは個別の状況によって異なるため、該当しそうな場合は勤務先または年金事務所・加入する健康保険(協会けんぽ・健保組合)に確認することをおすすめします。

退職月に賞与が出た

退職月に賞与(ボーナス)が支給される場合、資格喪失月に支払われた賞与については社会保険料がかからない場合があります。標準賞与額としての保険料の取り扱いは賞与の社会保険料のしくみで解説しています。

転職で月をまたいだ

退職日と次の入社日の間に空白期間がある場合、その期間は健康保険・年金のいずれかに自分で加入する必要があります(国民皆保険・皆年金のため)。一般的には国民健康保険・国民年金への一時的な加入、あるいは家族の扶養に入るなどの選択肢があります。詳しくは退職後の健康保険・年金はどうなる?をご覧ください。

6. よくある質問

Q. 初任給で社会保険料が引かれていないのですが、間違いではないですか?
A. 会社が翌月控除の方式であれば、初任給からは引かれず2回目の給与から引かれ始めるのが正常です。金額が0円であること自体は誤りではありません。心配な場合は給与明細の控除欄や、勤務先の人事・労務担当にご確認ください。

Q. 最後の給与が思ったより少なかったのですが、なぜですか?
A. 月末退職などで退職月分の保険料まで発生し、翌月控除の会社では前月分と退職月分の2か月分がまとめて最後の給与から控除されることがあります。加えて住民税の一括徴収が重なる場合もあり、通常の月よりも控除額が大きくなることがあります。詳しくは退職後の保険料のページもご参照ください。

Q. 社会保険料は日割りにならないのですか?
A. なりません。健康保険・厚生年金の保険料は「月」を単位として計算され、その月に何日在籍したかにかかわらず、資格を持っていた月かどうかで1か月分の要否が決まります。

ご注意:本ページの内容は一般的な制度の説明であり、記載のタイミング・取り扱いは概算・目安です。実際の控除方法(当月控除・翌月控除)や、同月得喪などの個別の取り扱いは、勤務先の給与計算のルールや加入する健康保険(協会けんぽ・健保組合)・日本年金機構の決定によります。個別の税務・社会保険のご相談にはお答えできません(運営者情報参照)。