標準報酬月額はいつ・どう変わる?定時決定と随時改定
毎月の社会保険料(健康保険・厚生年金)のもとになる「標準報酬月額」は、給与が変わっても自動で毎月見直されるわけではありません。原則は年1回の定時決定、給与が大きく変わったときの随時改定という2つのタイミングで決まります。仕組みと、「4〜6月の残業が多いと社保が上がる」という通説の正しい意味を、一次資料をもとに整理しました。
最終更新:2026年7月23日
1. そもそも標準報酬月額とは
社会保険料を計算しやすくするため、毎月の給与(報酬)を区切りのよい金額の「等級」に当てはめたものが標準報酬月額です。基本給だけでなく、残業代・通勤手当・役職手当などを含んだ総支給額がもとになります。この標準報酬月額に保険料率をかけて、健康保険料・厚生年金保険料が決まります。
等級表は加入する制度で異なり、健康保険は第1級(標準報酬月額5万8,000円)から第50級(139万円)までの50等級、厚生年金は第1級(8万8,000円)から第32級(65万円)までの32等級です。自分の等級の調べ方と全50等級表もあわせてご覧ください。
厚生年金の標準報酬月額の上限65万円は、2027年度から段階的に最高75万円まで引き上げられることが決まっています(〜2026年度は65万円のまま)。
2. 毎年の見直し:定時決定(4〜6月平均→9月から)
標準報酬月額は、実際の給与と少しずつズレていくため、毎年1回まとめて見直されます。これを定時決定といいます。
7月1日時点で在籍している人について、その年の4月・5月・6月に受けた報酬の平均額から標準報酬月額を決め直し、その年の9月分から翌年8月分までの各月に適用します。実際の給与から天引きされる保険料には、おおむね10月支給分(9月分の保険料を翌月控除する場合)から反映されることが多いです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 4月・5月・6月 | この3か月に支払われた報酬(残業代・通勤手当を含む総支給額)の平均を算定 |
| 7月 | 会社が「算定基礎届」を提出し、新しい標準報酬月額が決定 |
| その年の9月分〜翌年8月分 | 新しい標準報酬月額で社会保険料を計算(向こう約1年間) |
対象になるのは原則として支払基礎日数が17日以上ある月です(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)。日数が足りない月は平均の計算から除かれます。
3. 給与が変わったとき:随時改定(月額変更届)
昇給・降給などで給与が大きく変わったのに、次の9月(定時決定)まで保険料が古いままだと実態に合いません。そこで、年の途中でも一定の条件を満たすと標準報酬月額を見直します。これが随時改定で、会社が「月額変更届」を提出します。
次の3つの条件をすべて満たしたときに行われます。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①固定的賃金の変動 | 昇給・降給、基本給や手当(支給額・支給率が決まっているもの)の変更があった |
| ②2等級以上の差 | 変動した月から3か月の報酬の平均で出した標準報酬月額が、これまでの等級と2等級以上ちがう |
| ③3か月とも17日以上 | その3か月とも支払基礎日数が17日以上ある(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上) |
改定される時期は、変わった後の給与を最初に受けた月から数えて4か月目からです。たとえば4月に昇給して条件を満たすと、7月分の標準報酬月額から改定されます。
ポイントは①の「固定的賃金の変動」が出発点であることです。基本給や手当そのものが変わったときに対象になり、残業代のように月ごとに増減する変動的な賃金が増えただけでは随時改定は行われません。
4. 「4〜6月の残業で社保が上がる」通説の正確な話
「4〜6月に残業を頑張りすぎると社会保険料が上がって損」とよく言われます。これは定時決定の仕組みから来ています。標準報酬月額は4・5・6月の報酬(残業代・通勤手当を含む総額)の平均で決まり、9月分から翌年8月分まで使われるため、4〜6月の残業が多いと等級が上がり、向こう約1年の健康保険料・厚生年金保険料が高くなることがある、というわけです。
ただし、この通説には正確に理解しておきたい点があります。
- 等級が上がらなければ「損」にはなりません。残業代が増えても、それが今の等級の幅の中に収まるなら等級は変わらず、保険料も増えません。損になるのは、4〜6月の残業によって本来より上の等級に押し上げられ、その高い標準報酬月額が9月以降1年間適用される場合だけです。残業の多さと通常の給与額しだいなので、一律に「4〜6月は残業しない方が得」とは言い切れません。
- 払った分は将来の給付にもつながります。厚生年金保険料を多く払えば将来の老齢厚生年金が増え、健康保険の傷病手当金・出産手当金なども標準報酬月額に連動して増えます。「損」というのは短期的な手取りだけを見た見方です。
- 残業代の増減だけでは年度途中で上がりません。随時改定は固定的賃金(基本給など)が変わって2等級以上動いたときに起きるもので、残業代という変動的な賃金が増減しただけでは対象になりません。
つまり「4〜6月の残業で社保が上がる」は半分本当・半分誤解です。等級をまたぐほど残業が多い場合に向こう1年の保険料が上がる一方、長期では年金や各種給付の増加というトレードオフがあります。
5. まとめ・確認方法
標準報酬月額が変わるタイミングは、原則として年1回の定時決定(4〜6月平均→9月から)と、給与が大きく変わったときの随時改定(固定的賃金が変動し2等級以上、4か月目から)の2つです。自分の今の標準報酬月額は、ねんきんネット・ねんきん定期便、給与明細からの逆算、会社の人事・労務担当への確認、加入先(協会けんぽ・健康保険組合)への問い合わせで調べられます。