産休・育休中の社会保険料は免除される?条件と復職後まで
産前産後休業・育児休業を取得すると、会社経由の申出によって健康保険料・厚生年金保険料が本人分・会社分とも免除される仕組みがあります。給与から社会保険料が天引きされなくなる一方で、賞与の免除には別の条件があったり、復職後は随時改定(通常の改定制度)より要件の緩い改定があったりと、意外と知られていない点も多くあります。制度の一般的な仕組みを一次資料ベースで整理しました。
最終更新:2026年7月23日
1. 結論:申出により本人・会社分とも免除
産前産後休業(産休)や育児休業(育休)を取得している期間は、会社を通じて年金事務所(または加入する健康保険組合)に申出をすることで、健康保険料・厚生年金保険料(40〜64歳の方は介護保険料、2026年4月からは子ども・子育て支援金も含む)が、本人負担分・会社負担分とも免除されます。免除されている月は、給与から社会保険料が天引きされなくなります。
この申出は会社(事業主)が行う手続きで、本人が自分で年金事務所へ書類を出すものではありません。休業に入る前後で、勤務先の給与・人事担当が対象者を把握し、届出を行うのが一般的な流れです。免除を受けられるかどうか、実際の免除期間がいつからいつまでになるかは、最終的に取得した休業の実態と勤務先・年金事務所の確認によります。
2. 免除される期間
保険料免除の対象になる休業は、大きく分けて「産前産後休業」と「育児休業等」の2種類です。それぞれの一般的な期間の考え方は次のとおりです。
| 休業の種類 | 期間の目安 |
|---|---|
| 産前産後休業 | 出産予定日の42日前(多胎妊娠は98日前)〜出産後56日のうち、実際に休業した期間 |
| 育児休業等 | 原則として子が1歳になるまで。保育所に入れないなどの事情がある場合は、延長により最長で子が2歳になるまでの期間中 |
免除される月の考え方は「開始した月から、終了予定日の翌日が属する月の前月まで」という月単位のルールになっています。少しわかりにくいのですが、平たく言うと休業を開始した月から、休業が終わって職場復帰する前月までが免除の対象になる、というイメージです。育休を延長した場合は、延長後の終了日をもとに免除の対象月も見直されます。
産後パパ育休(出生時育児休業)も、育児休業等の一部として同様に免除の対象になります。詳しくはよくある質問もご覧ください。
3. 月次保険料の免除ルール(2022年10月改正後)
毎月の給与にかかる社会保険料の免除については、2022年10月の制度改正で次の2つの基準のどちらかを満たせば免除される仕組みになっています。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| ①月末時点で育休中 | その月の末日が育児休業等の期間中にあたる場合、その月の保険料は免除 |
| ②同一月内に14日以上の育休 | 月の末日をまたがない短期の育休でも、同じ月の中で育児休業等を取得した日数の合計が14日以上あれば、その月の保険料は免除 |
たとえば、月末をまたいで育休を取得していれば①に該当してその月は免除になります。一方、月の途中だけで完結する育休(たとえば月の初めから2週間だけ取得するようなケース)であっても、休業した日数の合計が同じ月の中で14日以上あれば②に該当し、その月の保険料が免除されます。逆に、月末をまたがず、かつ日数の合計も14日未満の短期の育休は、月次の保険料免除の対象にはなりません。
日数の数え方には土日・祝日を含む暦日ベースの考え方や、就業しない日の扱いなど細かいルールがあります。正確な判定は勤務先を通じて年金事務所・加入する健康保険にご確認ください。
4. 賞与の保険料免除は条件が厳しめ
賞与(ボーナス)にかかる社会保険料の免除は、月次保険料よりも条件が厳しく設定されています。2022年10月以降、賞与の保険料が免除されるのは「1か月を超える育児休業等」を取得した場合に限られます。
つまり、前章の②のように「月末をまたがないが14日以上」という短期の育休を取得しただけでは、月次の保険料は免除されても、その月に支給された賞与にかかる保険料は免除の対象になりません。賞与の保険料まで免除を受けるには、暦日で1か月を超える長さの育児休業等を取得していることが条件になります。
賞与にかかる社会保険料の仕組み自体(標準賞与額の考え方・上限など)は、賞与の社会保険料はどう決まる?で解説しています。
5. 免除中・免除後の年金はどうなる?
産休・育休で保険料が免除されている期間について、将来受け取る老齢厚生年金などの年金額を計算するうえでは、保険料を実際に納めた期間として扱われます。免除を受けたことによって、将来の年金額の計算上の記録が空白になったり不利になったりすることはない、という位置づけです。
この点は健康保険(傷病手当金・出産手当金など)とは別の話であり、あくまで厚生年金の保険料納付記録の扱いに関する一般的な説明です。個別の年金記録・見込額については、ねんきんネットや年金事務所での確認が確実です。
6. 復職後の保険料
育休から復職したあと、時短勤務などにより給与が休業前より下がるケースは少なくありません。この場合、標準報酬月額の見直しについて、通常の随時改定(月額変更届)とは別に、育休明けに配慮した特例の仕組みが用意されています。
- 育児休業等終了時改定 — 復職後3か月間の報酬の平均をもとに、従前の標準報酬月額と比べて1等級以上の差があれば、会社を通じた申出により復職から4か月目の標準報酬月額から改定されます。随時改定の3要件(固定的賃金の変動・2等級以上の差・3か月とも支払基礎日数17日以上)よりも要件が緩やかで、1等級の差でも対象になり、固定的賃金の変動という条件もありません。
- 養育期間の従前標準報酬月額みなし措置 — 3歳未満の子を養育している期間について、時短勤務などで標準報酬月額が下がった場合でも、将来の年金額の計算上は、養育を始める前の高い方の標準報酬月額で計算したものとみなす特例があります。こちらも会社を通じた申出が必要な制度です。
いずれも「申出制」である点が共通しています。自動的に適用されるものではないため、対象になりそうな場合は勤務先の給与・人事担当に確認することが必要です。
7. 住民税は免除されない
社会保険料とは違い、住民税は産休・育休を理由に免除される制度ではありません。住民税は前年の所得に対してその年の1月1日時点の住所地の市区町村が課税する仕組みのため、育休中で給与収入が減っていても、前年の所得に応じた住民税は発生します。
給与から天引き(特別徴収)できるだけの給与が支給されない月がある場合、会社を通じて普通徴収に切り替えるなどの対応がとられることがあります。取り扱いは勤務先や市区町村により異なるため、一般論としての説明にとどまります。詳しい仕組みは住民税決定通知書の見方もあわせてご覧ください。
8. よくある質問
Q. パパ育休(産後パパ育休)も社会保険料は免除されますか?
A. 一般に、産後パパ育休(出生時育児休業)も育児休業等の一部として扱われ、前章までに説明した月次・賞与の免除ルールの対象になります。取得日数の数え方や免除の可否は、実際の取得状況によって異なります。
Q. 免除の手続きは自分(本人)でやるのですか?
A. 一般に、保険料免除の申出は会社(事業主)が年金事務所や加入する健康保険組合に対して行うもので、本人が窓口に出向いて手続きをする必要はありません。休業に入る前後で、勤務先の給与・人事担当と休業期間の情報を共有しておくとスムーズです。
Q. 復職した直後から、なぜ保険料が高いままなのですか?
A. 育児休業等終了時改定は「申出制」であり、また改定されるのは復職後3か月の報酬平均をもとにした4か月目からです。復職直後の数か月は、休業前の高い標準報酬月額のままの保険料が天引きされることになり、その後の申出・改定を経て給与実態に近い保険料に見直される、という流れになります。